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2013.01.29 Tuesday

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職人の世界

2013.01.29 Tuesday 11:55
私が8歳の時に、料理の修行へ旅立った兄。
2年間学校へ行き、その後は料亭に就職。ひたすら修行に邁進したのだろうと思う。
実家の後を継ぐと言い、帰ってくるまでの十数年間。
年に2日くらい帰って来るだけだった。
だからこそ、中学入学までの記憶がほぼ皆無な私にとって、兄と一緒に生活した記憶はない。


兄が修行の場を変えて、ちょっと有名な料亭で働き始めたことは知っていた。
ただ、実家に帰ってくれば当然「おふくろの味」を求めているわけで、
兄が手料理を振る舞ってくれることは滅多になかった。
一体どんな料理を作る料理人なのか。
どんな所で働いているのか。
厨房に立つ兄の姿なんて、一切想像もつかなかった。


兄弟でありながら、少しばかり遠い存在だった兄。
口数も少ないから、何を考えているのかもよく分からない。
けれど、私が夏に帰国し、ちゃんと記憶が残る状況において一緒に生活している今、
兄の努力に頭が上がらない毎日が続いている。







兄が働いていた料亭とは、比較にならないほどの安さで料理を提供しなければならない環境。
当然、材料にかけられる費用も違う。
こんな山奥じゃ、手に入る材料も違う。
そんな環境においても、私達家族には想像もつかないような所から材料を取り寄せたり、
休みの日に出向いたりして、与えられた金額の中で、最高のサービスを提供できるよう、
兄なりにベストを尽くしているのだと、最近気づいた。


厨房に立つ姿も、普段のぐ〜たら姿からは考えられないくらい、ビシッとしている。
衛生面への気遣いも、修業先で徹底的に仕込まれたものなのだろう。
それに、「うま味」への思いの強さ。
“銀色の大きい鍋には、一体何が入っているのだろう?”と覗いてみると、
そこには黄金色に輝く出汁がとってある。
出汁に使う材料は、厳選したものを使っているらしい。それ相応の値段もする。
「出汁はね、和食の命だよ。」と、8歳の女の子に話しかけているかのような声で、私に言う兄。
“いつまでも子どもだと思って・・・!気持ち悪い!”と私は怒っているけれど、
そんなふざけた会話を通して、兄の料理人としてのポリシーも、実は垣間見えるのだと気づいた。






私は配膳する係なので、お客さんと会話する機会も多い。
料理をお出しすると、最近は「何これ?すごい!民宿の料理じゃないよ!」と驚いてくださる方が多い。
それを聞くと、何もしていない私でも何だか嬉しくなるし、もっと喜んでもらいたいと思う。
お客様からのメッセージ欄でも、“お料理を楽しみに来ました”という一言が、本当に増えた。
それは、間違いなく兄の努力の賜物。
けれど、民宿の晩ご飯では、兄の本当に表現したい世界を完璧に造り上げるのは、難しいと思う。


ただ、時折懐石料理のようなものをお出しする機会が訪れる。
その時が近づくにつれ、兄の動きも目つきも表情も、一気に変わってくる。
普段は口出しできる母も、この時ばかりは、一切何も言えない。
兄には、兄の表現したい世界がある。
前日の晩から、ひたすら厨房に立ち続ける兄。
お品書きを見ても、私なんかには、形も味すらも想像できない。
それが・・・午後6時が近づくにつれて、徐々に見えてくる。
秋には、器いっぱいに日本の秋が表現されていて、一種の芸術作品かと思えてしまう。
冬には、雪のある景色が表現され、心も体も温まるような料理が出来上がる。
お正月には、希望に満ちた新年の幕開けが、テーブルいっぱいに表現されている。



この無口でぐ〜たらな兄の頭の中には、一体どんな世界が広がっているのだろう?
私がこの山奥で、呑気に暮らしていた時にも、兄は見知らぬ土地で、ひたすら修行を続けていた。
「最近になってようやく、“俺はこの道で生きていくんだな”と、確信が持てたんだよ。」と兄が言った。






料理のことしか考えてなくて、お客さんがいないとぐ〜たらして、母に怒られてばっかりで・・・
頼りがいのない男だ!と、兄弟全員から冗談交じりにイジられる長男だけれども。
兄がこれまで重ねて来た努力と、厨房に立ち創りあげる世界を、家族全員が尊敬している。
我が家の立派な、職人さんです。
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